細川俊夫さんの「悲歌」-作曲家との会話ー


アムステルダム 2013年10月26日

 

光が輝いている空に、厚い雲がやすやすと滑りこんでいた。19階の部屋からの眺めは、空、川に反映される光と影の両方が見れる全景だった。

 

作曲家・細川俊夫さんのアムステルダム・ムジークヘボウでの「雲と光“Cloud and Light”」演奏会の当日、午前中に細川先生と「ヴァイオリンのための悲歌」を勉強させて頂く機会がありました。12月6日に東京オペラシティのリサイタルでこの作品を演奏するため、今回アムステルダムでお会いし、色々とお話しを伺うことができました。

 

「悲歌」は、2007年に亡くなられた梅原美也子さんへの追悼として作曲されました。細川先生は、梅原家とは長い付き合いがあり、哲学者・梅原猛 さんの思想から能や仏教への考え方が影響されたようです。そしてこの思想が音楽へと繋がり、作曲に於いてのテーマに結びついています。梅原氏の思想は仏教 における様々な象徴を探っていき、それがどの様に人間が霊魂と繋がるために発展されていったのかということを追求しています。人間が亡くなった人と繋がる ためにたどる「道」や捧げる心というのは、能でも表現されている本質的なテーマです。

 

細川先生と「悲歌」を勉強する前日に、今回の「Cloud and Light」演奏会のためのリハーサルを聴きにいきました。オランダ室内管弦楽団とのリハーサルで、プログラムは、「雲と光》笙とオーケストラのための」、「《開花》オーケストラのための」、「《冥想 −3月11日の津波の犠牲者に捧げる−》 オーケストラのための」。今回は細川先生自身が指揮をし、美術家・ノーマンペリーマンによるライヴ・アートとのコラボレーションもあり、幅広いスペクトル で先生の作品を聴くことができるとても貴重な機会でした。音が沈黙から流れ、響きと織り込まれていきながら自然と空間へ広大し、まるで大きなキャンバスを 塗るような勢いで大きな音の波が来る- 今回は目の前に実際に大きなキャンバス(スクリーン)があり、ペリーマン氏が音の流れと共に色、影、光を描いていき、スクリーンに映し出されていくという、実に素晴らしいコンセプトと演奏でした。

私は特に「雲と光」で聴いた宮田まゆみさんの笙とオーケストラの音に感銘を受け、思わず「悲歌」でもこの様な音が反映されているのではないか、と勝手に思いに浸り、次の日細川先生に聞いてみました。しかしこの案ははずれていたようで、「悲歌」は歌う声、亡くなった人と繋がるために表現する声だ、と先生は仰っていました。この世では聞いたことのないような、まさに霊魂と人間の間にさまよっている深い音―それがヴァイオリンを通して表現するこの曲の声。

 

 「一つの音の中に深く入っていくように弾いてごらんーそうしたらきっと色々な音が聴こえてくると思います」

音の強弱や増大によって音楽が進むのではなく、声の内面から湧き出るエネルギーや、亡くなった人との繋がりを求める心の深い底からの感情が、この作品の芯となっている、ということを感じました。

 

今回演奏会に向けて作品の作曲家自身と勉強させて頂いたことや、細川先生の演奏会へ向けてのリハーサル、そして演奏まで聴くことができてとても光栄でした。

先生との会話によって浮かんだ新たな演奏法のアイディアを取り組みながら、「悲歌」を日本と英国のお客様に演奏させて頂くことを楽しみにしています。日本では12月6日、東京オペラシティにて、英国では12月11日にロンドンの”Music at 22 Mansfield Street”にて演奏致します。

 


2013年12月6日()  19:00開演 18:30開場

東京私的演奏協会 第112回演奏会 

小町 碧 ヴァイオリン・リサイタル~ 詳細

 

東京オペラシティ・リサイタルホール 

小町 碧(ヴァイオリン)、丹 千尋 (ピアノ) 

 

ディーリアス:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ 第2番 

ホルスト:「無言歌」、「ワルツ・エチュード」

ブリテン:ヴァイオリンとピアノのための組曲 Op. 6

細川俊夫:無伴奏ヴァイオリンのための悲歌

エルンスト:無伴奏ヴァイオリンのための「夏の名残のバラ」変奏曲

エルガー:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ ホ短調 Op.82

 

全席自由 3,000円 

ご予約: 当サイトのお問い合わせ・フォーム

     又はオペラシティ・チケットセンター Tel. 03-5353-9999
後援:ブリティッシュ・カウンシル、一般社団法人日英協会、ブリテン・ピアーズ財団

 


11th December 2013   7:30pm

Nicholas Boas Charitable Trust

Recital at 22 Mansfield Street", London

 

Midori Komachi(violin), Simon Callaghan (piano)

 

Delius: Sonata for violin and piano No.3
Holst: Lied ohne Worte, Valse-Etude
Britten: Suite for violin and piano Op.6
Hosokawa: Elegy for solo violin
 
Ernst
Variations on "The Last Rose of Summer" for Solo Violin
Elgar: Sonata for violin and piano in E minor Op.82

 

Tickets: 15 (pre-concert drink included)

Booking: Bob Boas boas22m(at) btinternet.com

 

 

 

Write a comment

Comments: 0

Studio 18 (Japan)

Online Column:

Newsletter

Subscribe to our mailing list

* indicates required